青空と太陽









 青く澄み切った空が僕の頭上に広がっている。

 雲ひとつない空に僕は見惚れていた。



 僕と空。

 手を伸ばせば簡単に届きそうな気がする。

 だけど、いくら伸ばしても届きはしない。

 僕とは居る世界が違うんだ。

 空は大きくて、美しくて、

 僕の全てを包み込んでくれる気がする。

 そんな空を、僕は見つめることしかできなかった。









 僕の瞳にはいつも同じ人が映っている。

 それは、僕がずっと同じ人を見つめているからだ。

 アスカをずっと見つめているからだ。





 いつからだろう、アスカが気になるようになったのは。

 多分、出会ったときから。



 彼女の事を考えるだけで心が温かくなる。

 彼女が笑顔の時は僕も嬉しくなる。



 いつの間にか、僕の心の中には彼女が住み着いていた。

 多分、僕はアスカが好きなんだろうか。

 何処か人とは違う存在としてしか見れない自分に、

 最近になってようやく気づいた。





 そう意識するようになってからの生活は、

 正直、苦しくて嫌だった。



 アスカが下駄箱を開けるとき、

 いつもラブレターが入っている。

 帰り際も、アスカが知らない男に告白されているところを、

 よく見かけたりもする。



 そんな光景を目にするのが僕には辛かった。

 アスカが他の男の気持ちに応えるんじゃないかと思ってしまうからだ。





 だから僕は決めた。

 アスカに僕の気持ちを伝えようと。

 答えはある程度分かっている。

 僕も同じように振られるんだろう。

 だけど、キッパリ言われた方が僕も諦めはつく。





 僕の下らない時間を青く澄み切った時間にしてくれたアスカへ。



 愛している。



 勇気の無い冴えない僕より。













「アスカ、これ。」

「これってラブレターって奴?」

「さぁね。」



 直接言葉で言えなくてゴメン。

 どうしても君の顔を見てしまうと、

 大事な言葉が出てこないから。

 だから、この手紙で伝えることにしたんだ。



 アスカの事だ。

 そんな僕を意気地なしとでもいうんだろう。

 でも、それでもいい。

 これでやっと僕は気持ちを伝えることができたんだから。









「グスッ・・・・。」

「どうしたの、アスカ・・・・・。

 まさか手紙読んじゃったの?」



 アスカはゆっくりとした動作で首を縦にふる。

 と、同時に僕の顔が熱くなっていく。



 不意にアスカの目に光る滴が落ちる。

 一つ落ちれば、また一つと。

 涙はとどまる事を知らず、とめどなく溢れてきた。



「シンジの意気地なし。」











 突然事に驚く僕を青くどこまでも続く空が包み込んでいた。

 今なら言える気がする。

 青く澄み切った空に眩い光を発して輝き続ける太陽を見て決心した。

 僕の想いを今ここで伝えるよ。





「アスカ。」

「何よ。」



 こんなクサい言葉なんていいたくなかった。

 だけど、これが僕の気持ちだから。

 包み隠さず、ありのままの気持ちを君に伝える。



「アスカを青く澄み切った青空のように僕は包み込むよ。

 その代わりといっちゃ何だけど、

 僕を太陽のような輝きで僕を照らし続けて。」