僕の生きる目的
昨日までの僕は弱かった。
誰かにとっての些細なことが僕にとっては苦痛だった。
どうして僕は逃げたいと本気で思っているんだろう。
守らなければならない人がいると知っててもそう思ってしまう。
でも僕は逃げなかった。
逃げた先にはきっと誰もいない。
僕がここに来る前の生活は僕しかいない平和で孤独なものだった。
逃げる場所はそこしかなかった。
僕は変わった。
明日は死ぬかもしれない今のほうが、明日も生きている昔より充実している。
生と死は隣り合わせというけれど、それは正しい。
今までの僕は心臓が動いているだけで生きてはいなかった。
「あんただけが苦しいわけじゃない。
私だって苦しいの。」
アスカは強い心を持っているけど、触れるとすぐに砕けそうだった。
だから僕はずっと触れないようにしてきた。
でもアスカは言ってくれた。
優しく触ってくれるなら、僕に触ってほしいと。
なんて冷たい心なんだろう。
僕はこの冷たさを知っている。
アスカは愛を知らない。
そして僕も。
どうにかしてアスカの心を温めたい。
愛を知らない僕が人に愛を教える。
自信はないけれど約束しよう。
一生をかけて教えることを。
「本当に私でいいの?」
「うん。
僕はアスカといたい。」
僕のほうこそ聞きたい。
アスカの傍にいるのが僕でいいのか。
「うれしい。」
「アスカ。」
アスカを強く抱きしめた。
温もりが直に伝わっていく。
そのとき僕たちは知った。
きっとこれが愛なんだろう。
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