今と昔









 シンジと手を繋いでいないと、

 私の傍からシンジが離れて行くんじゃないかって、

 凄く不安になってしまう。



 シンジの姿を見ていないと、

 気が苛立って、悲しくなって、

 凄く寂しくなってしまう。





 何で私はこんな風になってしまったんだろう。

 初めて会ったときは、

 冴えない奴。程度にしか思ってなかったのに、

 日に日に私の心に住んでいたシンジが、

 どんどん膨らんで大きくなって。



 そして、いつの間にか、

 私はシンジを好きになっていた。





 好きになってからは、

 毎日、苦悩の日々が続いた。



 私以外の女がシンジと喋っている姿を見ると、

 何だか腹が立ってきて、その度に、

 私が何で怒ってるのよ。

 と、自分に言い聞かせたり。



 私が一緒に帰ろうって誘ったのに、

 掃除あるからって。言われたら、

 心が寂しくなって、

 一人家に帰って布団の中で泣いたり。





 人を好きなるって事は、

 弱くなるってことなのかな。



 その頃はずっとそんな事を考えていた。





 シンジが私の事をどう思ってるか、

 それが知りたくて、

 でも、聞く勇気も無くて。



 不安と期待がどんどん大きさを増していって、

 自分でも手に負えないほどになっていく。







 今と昔。

 変わっていく自分自身に驚く。

 好きな人の存在でここまで変われるのか。

 昔の自分がどれほど小さな存在だったか。



 今の自分にあって、昔の自分にないもの。

 人を想う心。

 純粋に人を想う続けようとする心。



 それを教えてくれたのは、

 たった一人の冴えない少年で、

 その少年を好きになってしまった自分自身。











 この抑えきれないシンジへの気持ち。

 言葉では表せないこの気持ち。



 それでも私は不器用だから、

 いつもシンジを目の前にすると、

 あと一歩のところで怖気ついちゃう。



 シンジ。

 私は好きなんだよ、シンジのことが。



 聞こえてるかな。

 私の心の声が。

 本当なら口に出して言いたいけど、

 今は勇気が無いから、

 言うのはまた今度。



 まだ、私達には時間がある。

 それに、私の時計は動き出したばかり。

 まだ、夜は来ない、だから、

 シンジ、それまで待ってて。



 シンジ、愛してるよ。


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