葛藤









 僕にはできるだろうか。

 愛する人を笑顔に、幸せにすることが、

 本当にできるのだろうか。









 僕は今までこの手を汚してきた。



 真紅の色に染まった僕の腕で、

 アスカを抱きしめることができるだろうか。







 人を殺めてきたことを後悔してるんじゃない。

 ただ、不安に怯える自分が、

 凄く虚しくて、無意味な存在なんじゃないか。

 そう思ってしまう。







 そんな葛藤を心の奥で繰り広げながらも、

 僕は抱きしめてしまった。



 細く弱弱しい声で泣くアスカを見ると、

 心よりも体が勝手に動いてしまったからだ。





 僕はアスカを汚してしまったのだろうか。

 本当に抱きしめていいのだろうか。



 目の前でなくアスカのことより、

 僕は自分のしていることが良いことなのかどうか、

 答えを出せない自分自身に自問自答を繰り返していた。









 笑顔になって、僕に微笑んで。



 僕の思いがアスカに届いたかは分からない。

 例え、届かなかったとしても僕は思いをアスカに届け続ける。



 勝手な僕の感情の為に僕はアスカを振り回したくは無い。

 でも僕は、アスカに笑顔でいて欲しいんだ。



 アスカが笑顔で僕に微笑んでいる間は、

 ただ何もせずとも、僕は笑顔でいられるから。





 そのときだけ、僕は見えない縄から、

 解き放たれた気分でいられるからだ。




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