怖い、醜い、でも









 人は人を犠牲にして、

 今という時間を過ごしている。



「俺は誰かの為に生きていく。」



 所詮、自己満足に過ぎないわけで。

 そんなことを言うぐらいなら、

 何も言わずに生きていけばいい話。





 それを知ってしまった僕。



 トウジを傷つけなければ僕は死んでいた。

 アスカも、綾波も、そうなっていただろう。



 今ある僕の命にはトウジの命も重なっている。

 トウジだけじゃないだろう。



 今まで僕が犠牲にしてきた人たち。

 それが些細なことだったとしても、

 今ある自分という存在は少なくとも、その上にある。







 霞んで見える目の前。

 心の窓を閉め切っていたはずなのに、

 僕をかばうかのように、目の前で人が死んでいく現実を見て、

 涙が溢れてきた。まるで、留まることをしらないかのように。





 そして、また僕は気づいてしまった。

 人は当たり前のように守ってもらっているんだ。

 その事実を知ってか知らずか、平然と受け止めて、

 何もなかったかのように、生きている、と。







 怖い、生きていくのが。

 また、人を踏みつけて、高みへと目指そうとするんじゃないか。



 生きていくのは凄く怖くて、醜いこと。

 気づいてしまったけど、どうすることもできない。



 人は一生懸命に生きなければいけない生き物だから。
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