守るために
僕は他でもない君を選んだ。
僕と君が幸せになるために。
二人で遠くへ行こう。
誰の手も届かないほど遠くへ。
僕たちは逃げた。
なんの魅力も感じられない町でも、
長く過ごせば少しは愛着がわく。
だからこそ離れるのが少し寂しいし不安だった。
世界で一番美しいわけではない夕日はとても美しいものだったと思う。
だからって悲しいとは感じなかった。
目を閉じればいつだってその時の感動を思い出せた。
今までの僕の世界はとても小さかった。
少なくとも抱きしめられるだけの大きさじゃなかった。
でも君と出会ってから僕の世界は少し広がった。
抱きしめられるだけの大きさにはなった。
それは僕にとっては世界よりも大きかった。
あれからどれだけの月日が経っただろう。
ここに来てからずっと二人きりだ。
こんなにも穏やかで暖かい一日があるなんて知らなかった。
僕の一日は君で始まり、君で終わる。
ずっと幸せなまま時間だけが過ぎていく。
守るべきものの大きさは手の届く限りだと気づいた。
だから僕は世界よりも君を選んだ。
世界を守れたとしても君がいなければ意味がない。
僕の瞳は君が映るだけで十分潤う。
だから君以外に大切なものはないと自信を持って言える。
もっと僕の心を君で満たしたい。
だから世界よ、終わっても構わない。
ずっと二人でいられるなら。
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