誰も私のことを心配してくれない。
皆は無理して気丈に振る舞っていることを知らない。
偽りの自分に少しでも似せるために生きていく。
たった一度きりの人生なのに、どうしてこんなことしてるんだろう。
もし今お母さんがいたら、私のことを気にかけてくれていたのかな。
そのときお母さんは私にどう声をかけてくれるんだろう。
『アスカ、大丈夫?』
『少しは休んでもいいのよ。』
いいえ、お母さん。
私は優秀なの。
だから大丈夫だし、休まなくていい。
まだまだ頑張れるの。
それが存在意義だと思うから。
きっと間違ってない。
そうだよね、お母さん。
どうして答えてくれないの?
「そんなに無理して辛くない?」
シンジは私に言った。
それは私のことを気にかけている言葉ではなかったけど、
なぜか嬉しかった。
本当の私の存在に気付いている。
偽りでない私が彼の目には映っている。
「無理なんてしてないわよ。
なんであんたにそんなこと言われないといけないわけ?」
「悪かったね。」
あんたに言われなくても自分が一番わかってる。
辛いに決まってるじゃない。
誰かに理解されて、受け入れてもらいたい。
きっとありのままの自分は良い子じゃないけれど、
それでも私のことをずっと見ていてほしい。
「あんたはいかにも辛いって顔してるわね。」
「元からだよ。
でも、今はあんまり辛くないかな。」
「どうして?」
「どうしてだろう。
ただ前よりかは辛くない。」
そう言ってシンジは微笑んだ。
その笑顔につられそうになったけど頑張って耐えた。
私もシンジみたいに変われるかな。
少しずつだけど素直になっていこう。
そう思えるってことはちょっとは変わったのかな。
もうこれ以上無理して生きたりはしない。
今この瞬間から私は良い子じゃなくなった。