先送り









「むー、シンジの奴...」



シンジは結構人気がある。

中性的な顔立ちとか、大人びたところがいいらしい。

聞いただけでも今まで何人かはシンジに告白したそうだ。

でも、シンジは誰とも付き合おうとはしない。

私には別に関係ないけど、ちょっと気になる。



「シンジって誰か好きな人いるのかな....」



「僕がどうかした?」



「へ? あ、いやなんでもないのよ。」



「それならいいんだけどさ。」



危ない。

聞かれてなくてよかった。



(まあ、シンジに限って好きな人とかいないわよね。)



学校では私やヒカリ以外の女子と特別仲良くしてるのも見たことないし、

ヒカリに限ってはシンジは眼中にないし。



いるとすればファーストか、それとも私。



「いやいや、それはないって!」



「ん、アスカ?」



「 ....気にしないで」



「今日なんだかおかしいよ?



少し顔も赤いし。」



そう言ってシンジは私の顔を覗き込んだ。

いかにも心配そうな顔だ。

こうやって色んな女の子を落としてるのね。



(落ちるのも仕方がないかも。)



シンジの瞳は黒い、でもいつも輝いて見える。

日が落ちた夜だって。



きっと私だけが気づいている。

シンジですら気づいていない。

シンジの瞳は誰よりも美しい。



(でもね、私だけは騙されないわよ、シンジ。)



ま、それとこれとは別の話。

そんなので私は落とせないわよ。

うん、絶対に。



「ほら、置いてくわよ。」



「待ってってば。」







まだ素直にならなくてもいいよね。

いつかはっきりしないといけないのは分かってる。

でもこの安心できる距離感を保っていたい。

こんなワガママな私のこと、好きになってくれるのかな。