退屈な日々の中に









「退屈だね。」



 サードインパクトが終って二年。

 僕は第三東京市の高校に通っている。

 もちろん、同居人であり恋人のアスカも同じ高校だ。



「そうね、退屈だわ。

 何か面白いことおきないかしら。」



 僕達は、ただ同じような日々を毎日繰り返している。

 その中にも、いろんな出来事はあったのだけれども、

 以前の様に生死を彷徨ったり、そういう経験から言えば、

 退屈でしかない。



「でもさ〜。僕はこういう日々を憧れたのかもね。」



 憧れ。普通の生活に対する憧れ。

 大切な人が傍にいて、それなりの時間を過ごす。

 僕の周りには僕を愛する人がいて、

 僕の周りにいる人を僕は愛する。

 いかにこの事が大事かで、幸せかを、

 僕はエヴァに乗った一年間で学んだ。

 その一年間は僕にとって何だったのだろうか?

 永遠に広がる青空をアスカと二人で眺めていると、

 何故か不意にそう思ってしまう。

 そして、その時はいつも同じ答えが出る。



 "生きることが無駄だと感じていた僕に、

  神様が生きる大切さを教えてくれたんだ。

  そして、その過程がEVAの操縦だったんだ。"って。



 僕は生を与えてくれた神様に感謝しなきゃいけないんだ。

 生きる楽しさを教えてくれたこと。

 人を愛する大事さを教えてくれたことに。



 僕が操縦していた初号機によってサードインパクトが起こされた。

 僕はその時何を思ったのだろう。

 記憶が曖昧で明確には覚えてないけど、

 多分、普通の生活を過ごしたいって只管思っていた。

 そして、これがその結果なんじゃないかって。

 サードインパクトのお陰で、この生活が送れているなら、

 ゼーレにも感謝しなきゃいけないのかも。

 どちらにしろ僕は、あの一年間に感謝しなきゃいけないのは変わらない。








「ちょっとシンジ。聞いてるの?」

「え?」



 ヤバイ。自問自答を繰り返してるときに、

 アスカは僕に話しかけていたんだ。



「最悪。シンジ私の話聞いてなかったんだ。」

「ア、アスカ。ごめん。」

「んで、何ボ〜ッとしてたのよ。

 まさか、変な事考えてたんじゃないでしょうね?」



 そ、そんな事あるわけないじゃないか。

 ま、考えた事が無いとは言い切れないけど。



「ち、違うよ。

 ちょっと考え事があったんだよ。」

「考え事?」

「そう。あの一年間に感謝しなくちゃいけないのかなって。」

「確かに私達は感謝しなきゃいけないのかもね。

 私達が巡り合えたのもEVAのお陰だしね。

 でも、今こうやって過ごしているのは自分達の力よ。」



 自分達の力。

 神様が仮に僕達に試練を与えたとしよう。

 その試練を達成するには、自分の力に頼るしかない。

 最終的には僕が頑張った結果がこれなのか。

 何だか分かんなくなっちゃったな。



「自分達の力か・・・・。

 僕自身、自分の力があるとは思えないけどね。」

「ホントにバカね。

 この第三東京市、それに世界を救ったのは、シンジなんだから。

 アンタには十分力が備わっているのよ。」



 何かアスカに言われると少し照れるな。

 それに、説得力があるんだよなアスカは。

 だけど、実際、

 事実上世界を救ったの僕達チルドレン。

 僕はその中でも一番多い戦果を上げただけに過ぎない。

 それに、今まで頑張ってこれたのも、

 全てがアスカのお陰といっても過言ではない。



 そうか。

 僕はアスカに感謝しなきゃいけないんだ。

 今まで僕に力を与えてくれたアスカに。

 これからもずっと傍にいてくれるアスカに。



「アスカ・・・ありがとう。

 僕はアスカに・・・・。」

「アスカに何よ。」



 やっぱりアスカに言うのは止めよう。

 アスカの事だ。僕をからかうに決まってる。



「いや、何でも無いよ。

 ただ可愛いなって思ってさ。」

「な、何よ急に。

 そ、そりゃ私は綺麗だし・・・・・・・・」



 アスカ・・・・・。

 やっぱりアスカは可愛い。

 不器用だけど、ちゃんと僕を想ってくれている。

 僕はそれ以上にアスカを愛しているけどね。

 ってこんな事を言ったらアスカに殺されるかもね。

 "私の方がシンジを愛しているわ!!"なんてね。

 そんな可愛いアスカを僕は守りたい。

 守れるだけじゃ駄目か。幸せにしてやらないとね。



 そんな感じで僕の中での自問自答は今日で止めることにしよう。

 次に、アスカと限りなく青い空を見た時、

 その時は絶対にこう思うことにしよう。



 "僕はアスカがいるこの世界が好きで、

  これからもこの世界でアスカと運命を共にしたい。"
と。




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