償いじゃなくて
アスカが望むなら、僕の命なんてどうでもいいんだ。
ただ、その代わりってのはなんだけど。
僕がアスカを愛することぐらい許して。
サードインパクトから数年後。
僕はいま、とてつもなく後悔している。
何でアスカを守れなかったんだろうって。
もし守れてたらアスカは僕の事を好きになってたかもしれない。
「はぁ・・・・・。」
やっぱり僕は最低だ。
愛している人に愛されたいから守るのか?僕は。
もし、そうなら死んだほうがいいのかも。
こんな腐った人間、いてもいなくても世界は変わりはしないんだ。
「シンジ、貴方は一生かけて私に償いなさい。」
あぁ、言われなくてもそうするつもりだよ。
アスカの為にこれからを生きることが僕にできる唯一のこと。
「分かってる。
それがアスカにしてやれる唯一のことだから。」
今思えば僕の人生って何だったんだろう。
人生は自分が主役だなんて言うけど、
僕は主役だったかな。
人を傷つけ、傷つけられ。
あげくの果てには悲劇のヒロインぶってる僕。
「"アスカにしてやれる唯一のことだから"?
そんなだから、いつまで経ってもアンタはバカなのよ。
人の気持ちも知らないで。
同情を煽ってるだけじゃないの。」
否定はしないよ。
僕は惨めな人間だからそんなことしかできない。
そう、こうやって自分自身を痛め続けることしかできないんだ。
「ごめん、でも事実じゃないか。
僕はアスカに酷いことをしたんだ。
だから、償うのは当然だろ?」
今更、何をしろっていうんだよ。
償い以外に僕にできることなんてないじゃないか。
アスカは、アスカは僕に何を求めてるっていうんだよ。
「償い償いって。
アンタは自分の意志はないの?
幸せになりたいとか。
無いんなら、アンタは廃人以下よ。」
僕にだって意志ぐらいあるよ。
できることならアスカを幸せにしたい。
でも、僕じゃ役不足なんだ。
それに資格もないし、自信もない。
アスカに酷いことをしたんだ。
そんな奴が幸せにできるはずないんだよ。
「あるさ。
でも、それは叶わないよ。」
「そうやって諦めるんだ。
ホント、卑怯ね。この意気地なし。」
じゃあ、叶うっていうの?
諦めない限り叶うって言い切れるの?
「じゃあ、僕にも叶えられるっていうの?
アスカは叶えられるって言い切れるのかよ。」
「言い切れないわ。」
ほら、言い切れないんじゃないか。
「でも、叶うわよ。
シンジなら、諦めない限り叶うわ、絶対。」
「どうして?
なんで僕なら叶えられるのさ。」
アスカはいつもそうなんだよ。
そんな目で見つめられたら、
信じることしかできなくなっちゃうじゃないか。
「そんなの決まってるでしょ。
私にとって貴方は特別な人だからよ。」
「それはどういうこと?」
アスカにとって僕は特別な存在って。
意味分かんないよ。
「私はシンジが好きなの。
シンジ、アンタは私のこと好きなんでしょ?」
「え、う、うん。」
僕の願いはアスカを幸せにすること。
アスカにとっての幸せって何なのだろう。
「アンタの、自分の気持ちを聞かせて。」
「アスカ、僕はアスカを幸せにしたいよ。」
そうだ、僕はアスカを幸せにするって決めたんだ。
アスカと出会ったあの日からずっと。
「だったら叶ったじゃないの。
私はアンタといることが幸せなの。
だから、これからもずっと私の傍にいて。
償いだから私に一生を捧げるんじゃなくて、
愛しているから私に一生を捧げてよ、シンジ。」
「アスカ、僕はアスカを愛し続けることを誓うよ。
そして、ずっと傍にいる。
アスカに僕の全てを捧げるよ。」
アスカ、君は僕にとって生きる為に必要な存在だよ。
僕が歩もうとしている道から逸れると、
また、正しい道に引き戻してくれる。
アスカ、これからもずっと傍で僕にだけ微笑んでいてよ。
なんて、生意気だな僕は。
こんな調子だからバカシンジって言われるんだよ。
僕の罪を愛することで許してくれてありがとう、アスカ。
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