僅かな希望を抱いて









 不器用に抱きかかえていたからなのか、

 それとも、僕が自ら手放したのか。



 どちらにせよ、

 失ってしまったんだ。



 時間も心も。

 今の僕は魂が抜けた人間。

 生きていて、生きていない。

 孤独を追い求め、幸せを突き放す。



 人を拒み、自分を拒む。

 人を恨み、自分を恨む。



 幸せになりたい、でも、幸せを求めない。



 矛盾に満ちた僕はもう救われない。

 自分にそう言い聞かせた。



 あんたバカァ?。



 言い聞かせる度に脳裏を過ぎる。

 ただ、この一言だけが僕の生きる糧。



 そして、僕は今日も生き続ける。











 戻りたい。

 汚れた世界だったけど、

 今より僕は幸せだったはずだ。



 アスカや、綾波。

 二人と一緒に戦ったあの日に、もう一度戻りたい。



 一時間でも一分でもいい、

 ただ、あの頃に戻れたらそれでいいんだ。









 昔の幸せに浸ることが、

 幸せに繋がるはずはない。



 それでも、僕は戻りたいと思ってしまう。

 今の世の中に絶望しているからか、

 それとも、今の僕に僕自身が絶望しているからか。



 所詮、現実を逃避していることには変わりはないけど。









 当てもなく彷徨い続ける。

 歩いているようで、歩いていない。

 進んでいるようで、進んでいない。



 僕はまだ何も変わっていない。

 ずっと過去と未来の間に立ち尽くしているだけ。











 心と時間。

 全てを失った僕。

 ただ、仄かに煌く灯火だけが僕を生へと導く。

 その灯火が消えない限り僕は生き続ける。



 灯火が僕の目の前を照らす限り、

 僕は生き続けなければならない。



 それは命令でも使命でも何でもない。



 ただ、そう感じているだけ。



 今は遠く離れていても、

 いつかきっと近づける日を信じて、

 歩み、進み続けようって。







 だから、僕は生き続ける。

 僅かな希望を胸に。


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