季節は巡る
僕が住むこの国には四季がある。
春に君と出会い、夏に恋に落ち、秋に君と結ばれ、冬に君が去った。
君と出会ってから、一年がとても短く感じられた。
50年後にはどちらかが亡くなっているかもしれない。
あの時の僕にはその50年ですら物足りなかったのだから、この1年は本当に一瞬だった。
午後の帰り道に君とよく通った喫茶店が改装されていた。
懐かしさは残っていたけれど、どこか違って感じた。
あの頃の君の面影はそこには無かった。
世界はこれからも君を忘れていくのだろうか。
なら僕だけはせめて君を胸に焼き付けて生きていたい。
季節は廻る。
君と出会えたから草木が芽生え、
君を好きになったから大きく実り、
君と結ばれたから葉が赤く染まり、
君を失ったからそれらは枯れたのだと思っていた。
そうであって欲しかった。