遠くに行く君へ
君は明日ここを発つ。
泣いている君を見て、より一層実感した。
僕は今にも泣き出しそうだった。
でも泣くわけにはいかない。
いつの間にか辺りはすでに暗くなり、夜が訪れた。
こんなにも悲しい夜は初めてだった。
次に陽が昇るとき、僕たちは当分会えなくなる。
あんなにも好きだった明日は来ない。
冷たい君の手が好きだった。
だからこそ握る度に君の脆さを感じていた。
僕が守らないと。
冷たい君の手は僕を温めていた。
今夜は少しいつもより寒い。
寒いねと言えば、そうだねと返ってくる。
でもこれからは違う。
他愛もない会話が初めて愛おしく感じた。
胸を張って君を送り出すことはできない。
遠くに行く君のことが不安で仕方がない。
でも僕には分かっている。
今君のためにできることは何か。
離れれば離れるほど君との距離がはっきりしていく。
きっとこの距離は僕たちをより強く結ぶはずだ。
次会うときにより愛し合えるように、
僕は嫌々君を送り出すことにする。