時を越えて会いにきた











「未来で待ってる。」



 千昭が残した最後の言葉。

 本当はもう会えないのかもしれないけど、

 僅かな期待を胸に私は今を生きてる。



 いつか必ず絶対会える日を信じて私はこの時を生きている。









 千昭のいない高校。

 あれから一ヶ月経っただけなのに、

 もう皆は千昭の事を忘れている気がする。



 もし、私が千昭と仲良くなかったら、

 皆と同じように忘れていくんだろう。



 でも、私は忘れることができなかった。

 毎日毎日、頭を過ぎる。

 千昭と功介と私、三人で遊んだ事、

 コンビニで座り込んで漫画を読みあさった事、

 そして、千昭の言葉・・・・。



 全てが頭の中を駆け巡っていく。

 その度に凄く切なくて、悲しくて、

 何より千昭に今すぐ会いたくなってしまう。



「千昭、何してるのかな。」



 一人のんびり木陰に腰を下ろし呟いた。

 胸の中に気持ちを溜め込むのが辛いから。



 誰かに聞いてもらえるわけじゃないけど、

 そっと、一人呟いた。



 ふと私の体を影が覆い被さった。

 人の形。

 多分、攻介だろう。

 いつもここにいる私に声をかけてくれているから。



「じゃあ行こっか、野球・・・・しに。」

「そうだな、早く行こう。」



 あれ・・・・。

 赤茶色に染まった髪の毛、

 赤色のTシャツ、それにこの声。



「・・・・・・千昭。

 何で、何で、何で?!」

「居ても居られなくなって、

 ついまた来ちまった。」



 功介じゃなくて千昭。

 私の目の前には千昭がいた。



 何故だろう。

 涙って嬉しいときに出るはずなのに、

 全然、涙が出てこない。



「おぃおぃ、せっかく会いに着たのに、

 泣いてもくれないのか?」

「ごめん・・・・。

 嬉しさより、驚きの方が大きいみたい。」




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