I can't say
「シンジ・・・好きなの。」
湯船に立ち込める白い煙。
私はその煙に向かって小さな声で一人つぶやいていた。
「好き、シンジ。」
色々、告白のパターンを考えながら、
思考錯誤を繰り返していく私。
どんな告白であったとしても、
好きとさえ伝えれば十分伝わるってことは、
百も承知で、でも、それが言えなくて。
「はぁ・・・・・。」
バカシンジから言ってくれたら全て終わるのに。
ふつふつ煮えわたる私の気持ちは、
徐々に苛立ちへと変わり始めた。
「シンジが悪いのよ。
私のこと絶対に好きなはずなのに。
好きの一言も言ってくれないし。」
顔を浴槽につけ、体育座りをした私。
言いたくても、言えないもどかしさを、
どうにかしてシンジに気づかれないように。
私はただ火照った自分の体を見つめ続けていた。
「今日のお風呂は長かったね。
もう、ご飯できてるから食べなよ。」
「ね、ねぇシンジ。」
「どうしたの、アスカ?」
私に向かって黒い瞳を向けてくるシンジ。
少し笑みを浮かべているシンジの顔は、
いつも私をクラっとさせる。
「な、何でもないわよ。
それより朝ごはん食べないと。」
私は赤く腫上ったような顔を隠すために、
余所余所しく朝ご飯を口へと勢いよくほおばる。
シンジのご飯は凄く美味しいけど、
今日のご飯は美味しくはなかった。
味わって食べることより、
シンジの事を考えて食べていたから。
朝ご飯を食べ終わって部屋に篭った私。
シンジのことを見るだけで、
胸が痛くなってしまうから、
逃げるように帰ってきた。
「シンジのこと好きにならなきゃよかった。」
何度私が困らないといけないのよ。
どうにかしてシンジが悪いように、
心の中でそういう風に考えを変えようとする。
でも、最終的にいえることは、
私はシンジのことが凄く好きで、
今はシンジを中心とした生活だということ。
シンジという人生の歯車が抜けたところで、
私の人生はそこから動かない。
「シンジ、アンタのせいなんだから。
私に、こんな思いさせてさ。」
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