出会い









「シンジ。ほな、ワイら帰るわ。」

「シンジ。先に帰るな。」



「トウジにケンスケ。また明日。」



 ここは都内にあるネルフ進学塾。

 名前の響きはいいが、普通の塾とは変わりは無い。



 そして、塾の教室に一人佇んでいるのは、

 碇シンジである。

 テストでは中々の点を取っているのだが、

 何故か、毎回補修なのである。



「今日も補修か・・・・・。

 さすがにちょっと休みたいよ。」



 確かに毎日夜遅くまで補修していれば、

 休みたくもなるだろう。



「シンジ君。終わった?」



 塾で国語を教えている葛城ミサトである。

 正直、頭はかなり悪いのだが、

 何故か国語だけは理解しているようだ。



「えぇ、一応。」

「じゃあ、今日はこれで終わり。」



 シンジは机の上においていた教材をカバンにしまった。

 そして、足早に教室のドアへと歩いていった。









「もう、何で私が補修しなきゃなんないのよ。」

「アスカ、いいから早く終わらせなさい。」



 シンジとは別の教室に何やら喚いている人がいた。

 惣流・アスカ・ラングレー。

 一言で言えば、美少女。

 外見だけでなく、成績も優秀なのである。

 ただ、正確を除いての話しだが。



「はい、終わったわよ。」

「はい、お疲れ様。かえっていいわよ。」



 アスカは今まで解いていたプリントを、

 クチャクチャにまるめてゴミ箱に捨てる。



「ちょっとアスカ。

 貴方はもう少し物を大切にしなさい。」

「分かってるわよ。

 これからは大切にするから。」



 アスカは手提げカバンを肩にかけて、

 その教室のドア勢いよく開けた。











 何も変哲のない一日。

 そこに出会いはある。



 そして、この二人の少年少女にも出会いはあったのだ。









「早く帰らないと。」



「早く帰りたいのに。」



 シンジはドアを開けると、そのまま出口へと走った。

 短い廊下だけど、早く帰りたかったのだ。



 そして、同じくアスカも。

 こちらはシンジとは違って全力疾走で走っていた。



「いたっ。」

「きゃっ。」



(痛いな・・・。誰だよぶつかってきたのは。)



(いた〜い・・・。誰なのよ、私にぶつかってきたのは。)



「き、君大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ!

 もう、服よごれちゃったじゃないの。

 弁償よ、べ・ん・しょ・う!」



(な、何でこんな言われようされなきゃなんないんだよ。

 ぶつかったのはお互い様なのに。)

(なんでこいつも走ってるのよ。

 しかも冴えない顔だし。)



 よく分からない出会いをした二人。

 この出会いが彼らの人生を大きく左右することになろうとは、

 誰も知りえなかった。



「弁償って急にそんなこと言われても。」

「確かにそうね。

 じゃあ、缶ジュース3本おごれば許してあげるわ。」



(完璧に相手のペースになってる。

 僕だって被害者なのに。)

(この私におごれるだけでも有難いことなのに。

 ちょっとは感謝してるのかしら。)



 シンジは少し口を尖らせ、

 アスカは上機嫌に鼻歌を歌っていた。



 そして、シンジとアスカは二人で外へと向かったのであった。
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