恋人という名の鎖









 好きという言葉を何百回言うより、

 愛していると心を込めていうより、

 ただ、何も言わずに手を繋ぐことの方が、

 自分の気持ちを伝えることができる。




 一度、手を繋いでしまうと、

 手を離す時が来るのが凄くもどかしくて、

 時が止まって欲しいとさえ感じる。



 離してしまうと、

 もう手を繋げなくなるかも。

 まだ、手を繋いでいたい。



 いろいろな気持ちが心を交差する。









 アスカの手。

 凄く綺麗な肌に、細くて白い指。

 まだ成人じゃないのに、

 凄く大人っぽくて魅入ってしまう。



「ちょっとシンジ。

 何ボケッとしてんのよ。」

「ごめん・・・。」



 先を歩くアスカの歩調に、

 一生懸命合わせようとするけど、

 中々歩調が合わない、というより、

 合わせようとすれば、するほど、

 アスカはこれでもかと、これでもかと早歩きで歩く。



「アスカ、ちょっと待ってよ。」

「しっかりしなさいよね、私の恋人なんだから。」



 恋人って言っても、

 まだ手も繋いだ事もないし、

 今までよりも進展があったわけでもない。



 ただ、お互いの気持ちを確かめ合っただけで。



「う、うん。」



 だから、僕は少し恋人という関係に躊躇いを感じていた。

 友達以上、恋人未満。

 今の僕達の関係は多分そういう感じだろう。



「どうかした?」

「いや、何でもないよ。

 それより早く学校行かないと。」



 そこまで急いでるわけじゃなかった。

 ただ、この雰囲気が嫌で、

 学校の教室にへと逃げ出したかった。



「うん、そうね。」



 返事を返すわけでもなく、

 少し俯きがちに歩道を歩いていく。



「あ、もう学校。」



 俯いていた顔を上げると、

 もう学校に来ていたことに気づいた。



 
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