恋人という名の鎖









「シンジ、一緒に帰ろ。」

「あ、うん。」



 いつものように僕達は学校を出て、

 通学路をのんびりと歩く。



 今日の晩御飯は何がいい?とか、

 そんな日常的な事を話していた。



「ねぇ、シンジ。」

「何?」



 話し終わったとこで、

 アスカが改まって僕に顔を向けた。



 いつもとは違う雰囲気。

 真剣な形相のアスカを見たのはいつ以来だろう。



「私さ・・・・告白されたの。」

「・・・・・え?」



 告白されたって誰にだろ。

 まさか、そいつと付き合うとか・・・言うのかな。



「その私ね、断ろうと思ったの。

 でも、どう断ったらいいか。」

「いつものアスカみたいに断ればいいじゃないか。」



 そうだよ、いつもみたいに、

 キッパリと断ればいいのに。



 それとも、相手のこと好きなのかな。



「私の為だったら何でも出来る。

 そう直接、言われたら、いつもみたいにいえないよ。」

「僕とアスカは恋人じゃなかったの?」



 僕とアスカは確かに気持ちを確かめ合った。

 それなのにどうして・・・。



「だって、自信が無かったんだもん。」

「自信って何の?」

「シンジと付き合ってるていう自信。」



 確かに僕達は気持ちを確かめあっただけで、

 それから進展は無かった。



 でも、それでも僕は悔しかった。

 僕以外の人間の一言でアスカの心が揺らいだ事に。



「それは僕の事が好きだという気持ちに、

 自信が無くなったってこと?」

「そうじゃないの。

 そうじゃなくて・・・・。



 ただ、友達以上恋人未満っていうか。

 恋人なはずなのに、

 手も繋いでないし、前と変わってないし。」

「アスカ・・・・・。」



 今手を繋がないと離れていってしまう気がする。



 根拠はこれっぽちもない。

 でも、もしアスカが僕の傍から離れて、

 他の男のところにいくなんて事は、

 絶対に認めたくない。



 それに手、繋いでみたいし。



「シンジ・・・・・・・。」



 勇気を振り絞ってアスカの手をとった。

 アスカの手から僕の手へと、

 手の温かさが徐々に伝わってくる。



「私に言われたから手を繋いだの?」

「キッカケはそうだけど、

 僕が手を繋ごうと思ったのは、

 アスカを他の男にはやれないし、

 それに、前から繋ぎたかったんだ。」



 アスカに嫌がられるのを恐れて、

 手を握らずに今まで過ごしてきた。



 それでいいのか?とも自問自答をしてみたけど、

 結局は今までとおりに過ごしていた。



 でも、それじゃ何も変わらない。




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