恋人という名の鎖
「シンジ・・・・。」
徐々に熱を帯びてきているような感覚。
心地よくて、凄く緊張して。
アスカの手の温もりが凄く伝わってきた。
「アスカ、ごめんね。
アスカがそんな風に思っているの知らなくて。
それに気づこうともしないで・・・。
本当にごめん。」
「ううん、もういいよ。
それに私だって悪いんだもん。」
「アスカは、悪くないよ。僕が悪・・・・」
「違うの。」
少し難しい顔をしているアスカ。
何が違うって言うんだろう。
何も分からないまま僕は聞いてみることにした。
「違うって・・・何が?」
「えと、その・・・・・。
告白されたって言うの嘘なんだよね。」
「・・・・え。」
嘘って・・・・。
凄く心配してたのに・・・。
でも、良かったよ。」
何で嘘ついたんだろ。
何となしにアスカの気持ちは分かったけど、
普段強がってるアスカの口から聞くまでは・・・。
「ごめんね、シンジ。
シンジに嘘ついちゃって。」
「いいよ、気にしてないから。
でも、どうして嘘ついたの?」
僕の気持ちを確かめたり、
そういうことは別に嘘つかなくてもいいのに。
試されていた僕にとって、
正直なところ納得できないところもあった。
「だって、恥ずかしいじゃない。
手を繋いでとか言ったりするの。
だから言わずにずっと待ってたけど、
シンジ、手を繋いでくれないし。」
「そっか。
素直にならないとね。
アスカも、僕も。」
「私が素直じゃないって言いたいの?!」
アスカの何処が素直なんだよ。
いつも強がっていて本当の姿を見せようとしないのに。
自分の気持ちに嘘ばっかついているのに。
「なら、何処が素直なの?」
「そ、それは・・・・・。」
「悩んでるアスカって可愛いね。」
「え・・・・、
な、何言ってるのよ。
こ、このバカシンジ!」
からかったつもりで言った言葉だったけど、
でも、本当に凄く可愛くて、
動揺するアスカも、頬を赤らめるアスカも。
今まで以上に可愛く見えてきて。
「素直になるって言ったろ?
だから、可愛いって言ったんだよ。」
「シンジの癖に生意気ね。
何よ、調子に乗って。
そんなんで喜ぶとか思ってるの?」
顔を真っ赤に染めて言うアスカの言葉には、
異常な程、説得力が無くて、
つい、吹き出してしまった。
「な、何がそんなに可笑しいのよ。」
「別に何も無いよ。
ただ、アスカといると楽しいなって。
凄く幸せだなって感じたんだ。
そう思ってたら、何か笑っちゃったんだ。」
「シンジ・・・・・・・。
私も凄く、その、幸せだよ。
シンジといるとき。」
僕の事を見つめるアスカを見ると凄く体が熱くなってくる。
今にも抱きしめたくなってきて。
顔を夕日のように赤く染まっていると、
凄く意地悪してみたい気分になってきて。
一人の人間が少し表情を変えただけで、
僕がこんなにも影響されているのに気づいた日。
その日にはもう手遅れで、
僕はその人の事しか考えられなくなっていた。
僕の胸を締め付ける痛み。
絶え間なく感じ続ける圧迫感。
僕の心を動かす鎖は、
僕の意識を一人の人間に向かせようとする。
アスカ。
僕の心に巻きついている鎖。
一生解けることなく、僕の心を蝕み続ける。
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