寝顔に向かって









「まだ話さないつもり?」

「だって・・・・・。」



 シンジの視線が頭の上にのしかかる。



 あれからずっと私は黙り続けていた。

 会いたかった、といえば済む話なのかもしれないけど、

 私はその言葉がどうしても言えなかった。



 プライドが邪魔をしているのかもしれないけど、

 多分、ただ私に勇気が無いから言えなかった。



「僕に会いたかったの?」

「そんなんじゃ・・・・ないわよ。」



 頷けばいい話なのに、

 何で私はそんなこともできないの?

 何で私はシンジを目の前にすると、

 どうしても、どうしても何も出来なくなっちゃう。



「じゃあ、会いたくなかったのに来たの?」

「そうじゃないの・・・。」



 そんなに困った顔しないでよ。

 私が一番困ってるんだから。



「僕はアスカに会えて嬉しいよ。」

「シンジ・・・・・。」



 何でシンジはそう素直なのよ。

 私に出来ないことが、何でシンジは出来るの?



「アスカは嬉しい?」

「嬉しくなんか・・・・・・・。」

「嬉しくない・・・・の?」



 違うの、本当は凄く嬉しいの。

 嬉しくて、嬉しくて・・・・。



 ただ伝えようとしても伝えることができないだけなの。



「そんなことない。」

「じゃあ、嬉しいんだね。」

「・・・・・・・。」



 私はゆっくりと頷いた。

 上手く乗せられた気もするけど、

 ちゃんと伝わったみたい。



「じゃあ、僕に会いたかったんだよね。」

「・・・・・・・。」



 無言で頷いた。

 凄く恥ずかしかったから、顔を下げたままでだけど。



「アスカ好きだよ。」

「ちょ、何で今そんなこと、

 別に言わなくても・・・。」

「今なら言える気がするから。」



 今日のシンジは何か変だよ。

 いつもはオドオドしてるくせに、

 今は凄く強くて、シンジであってシンジじゃないみたい。



「私も、私も、同じ気持ちだよ。」

「そんな言い方駄目だよ。

 ちゃんと言ってよ。」



 そんな・・・言えないよ。

 好きだとか、恥ずかしいこと言えないよ。



「アスカ、意識することないよ。

 ただ、気持ちを口に出すだけでいいんだよ。」

「分かってるわよ。」



 シンジ、私は凄く好きなの。

 シンジの事が好きで、好きで堪らないの。





「私シンジの事が凄く好き。」













 ふと目を開けてみる。

 ここは私の部屋。



 徐に立ち上がって辺りを見回す。

 昨日、シンジの部屋に行ったはずなのに・・・・。

 あれは夢だったのかな。



 キッチンにいるであろうシンジの元へ、

 私はゆっくりと部屋を出ていった。



「アスカ、おはよう。」

「おはよう・・・。

 昨日のこと覚えてる?」

「アスカが僕に好きって言ってくれたこと?」



 良かった夢じゃなかったんだ。



「そうよ、そのこと。

 私たち、恋人になったんだよね?」

「僕はそのつもりだけど。

 アスカが僕の彼女で、僕がアスカの彼氏。」

「へへ、シンジ大好き。」



 シンジの腕に私はしがみ付いた。

 もう絶対にこの腕は離さない。



 私と付き合って後悔しないでよね。



「僕も大好きだよ。」




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